季節めぐり

季節はめぐり、人生もめぐる

31年前の中国人留学生と天安門事件

 

今日、6月4日といえば、この忘れ得ぬ歴史的出来事につきる。

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天安門事件が起きた1989年、私は大学を卒業して2年目で、

新卒就職はせずに、大学時代からのアルバイトを続けていました。

 

といっても、3社のアルバイトかけもちで、

おそらく、まともに就職した同級生たちより忙しい日々。

 

その一つが、都内で飲食店展開をしている会社が運営する居酒屋。

店には、都内の、あの国立大学医学部に通う中国人留学生の女性が

アルバイトとして通っていました。

 

店内にはテレビモニターが設置してあり、

普段は国内外のヒット曲のプロモーション映像が流されていましが、

たとえば、注目の野球の対戦があったり、

見守りたいニュースがある日などはテレビ番組に切り替えて、

スタッフ、お客さんともども、その画面をチラチラと観ていました。

 

天安門事件のその日、私も、中国人留学生の彼女も、店に出ていました。

そして、天安門広場に集結した市民や学生たちと人民解放軍が衝突する、あの場面。

テレビでは、それが繰り返し流されていました。

 

その日は、来客数もあまり多くなく、

スタッフたちも、その画面を息を飲んで見守っていたのです。

 

その途中、突然に、中国人留学生の彼女が、わっと泣き出し、

そのまま、スタッフが着替えなどをするバックヤードに駆け込みました。

 

びっくりしました。

 

皆、ただ呆然とするだけで、どうすることもできませんでした。

 

私は、そして、きっと、その場にいた他のアルバイトスタッフも、

中国人である彼女が、その映像を見て何を思っているのだろうかと、

そういうことは考えていましたが、なにしろ、20何歳かの若者ばかり。

 

彼女を含めた皆で、その光景を前にして、どんな会話をすればいいのか迷うばかりで、

いつになく、シーンとした店内になっていたことを記憶しています。

 

そんな重苦しい空気の中で、泣きだしてしまった彼女。

店長が、「今日は、もう帰ろうか」と声をかけると、

うんと頷いて、閉店前に早退することになりました。

 

その直後、彼女は1カ月ほど帰国するということでアルバイトを休むことに。

 

そして、再びアルバイトに復活した時、思っていた以上に晴れ晴れとした様子で、

私たちも、思うところはありながらも、

なんとなく救われた気分になったのでした。

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中国の大学医学部を出て医師として働き始めていながら、

日本に医学部大学院留学生として来日したのだと言ってたな。

今は、どうしているかな。

このたびの新型コロナ禍の中でも活躍した(している)のかな、と。