今回は8月10日に雑草の話としてアップした際に、
最後にふれたクラウンベッチのことを綴ります。
裏庭に、クラウンベッチの小さな苗を一つ植えたのは、
2013年の春先のこと。
もう20年以上前なのだと思いますが、父が裏庭の一角に土盛りして、
いわゆるレイズドベッドになっている部分があるのですが、
隣家との境目にあるフェンスには白モッコウバラが植えてあります。
クラウンベッチは、その雑木や低木周りの下草として植えたのでした。
繁殖するということで、注意しながら育てなければいけないものの、
「日陰になるところだし、まあ、いいか・・・」と、
植えた当初は安易に構えていました。
最初の年は、繁殖するといっても、
「おお、さすが生育旺盛だな」という程度で、
はびこって困るほどではありませんでた。
それになにより、こんなにかわいいんです。
植えた翌年、2014年の早春、
冬の間は地上部が枯れているんですが、
あちこちから、かわいらしい新芽を出し始めました。
葉がカラスノエンドウに似た、
一目でクラウンベッチとわかる葉を持つ新芽です。
そして、それがグングン成長。
その頃、庭の草取りをしたのは父でした。
父は草取りが好きで、しかも几帳面な性格だから、
父が草取りをした後は、小さな草まできっちり抜き取って、
すっかーり、きれーいになります。
それだけに、残しておきたい春の新芽まで取られないかが心配。
すると、やはり私のちょっとした不安は的中。
「私が植えたものまで抜かないでね」と言っておいたのですが、
抜き取って集めてある草の山を見ると、
クラウンベッチもたくさん混ざっていたのでした。
それで私、
「お父さん、私が大事にしている花まで抜いちゃったじゃない!
今一番成長して、これからかわいい花が咲くところなのに」と、
ちょっと強く言ってしまったんですよね。
そうしたら父は、私の予想を超えて、
ひどく落胆してしまって。
少し時間をおいてから、父に、
「いいよいいよ、あれ地下茎で増えるやつだから、
きっと、また芽を出してくるから」と、
父の落胆を覆すつもりで言ったものの、やはりまだ残念そうにしていました。
しかし、そこは強いクラウンベッチ。
しっかり芽を出して、
翌年以降も、もう少しおとなしくてもいいよ、
と思うほどに茂ってくれました。
蝶々も大好きなクラウンベッチ。
でも、アブラムシなど、困る害虫にやられることはありません。
左上の葉はヤマボウシ、
右下の細い葉は源平咲きするシモツケです。
クラウンベッチ(Crown Vetch)という名の Vetchとは、
ソラマメ科の植物のこと。
Crownは花の形が王冠のようだからでしょうね。
別名として、ツルレンゲとも呼ばれるそうですが、
花の様子は、その名の通り、レンゲにもそっくり。
カラスノエンドウの葉に、レンゲが咲いているという感じです。
一つひとつの花は、薄いピンクと白の蝶形花で、
それがずらっと円をつくるように並んだ姿はとてもキュート。
蕾の花びらが見え始めた頃。
それが、こんなふうに立ってきて。
ああ、もう初夏だなぁと感じる頃の様子です。
花芽の見え始めた頃も、こんなにかわいいんですよ。
父が、雑草と一緒にクラウンベッチも抜いてしまった翌年以降、
「あの花、今年もすごく茂ってきてるから心配しないでね」と、
何度か父に言って、罪に思わせないようにしたんだよなぁと、
懐かしく思い出されます。
そして昨年、旅立ってしまった父。
父の棺に、庭で咲いていたいくつかの花とともに、
クラウンベッチもそっと入れておきました。
あの時、この花のことで、
あんなに強く言ってごめんねと、心の中で言いました。
そして、そっちの世界でも、クラウンベッチのお花畑をつくってね。
でも、抜きすぎ注意だよ(笑)、と。