「明治」という時代は、さぞや面白かったんだろうな
「明治」という時代に興味があって、
書店で「明治」の文字が入った本をみつけると、
手に取らないではいられません。
『明治風物誌』は、もう随分前に購入して、何度か読み、
最近も時々取り出してはパラパラとめくって、
その時読みたいと感じるページを、気の向くままに読んでいる本です。
汽車、植物園、扇風機、石鹸、バナナ、ラムネ、街路樹、蛇の目傘、
郊外、半熟玉子、洋書、新聞広告、雑誌、などなどなど、お題は全部で97題。
静かに語られながら、話は起伏に富んでいて、
明治時代の人々の生活に溶け込んでいたであろう、
まさしく「明治の風物」のあれやこれや。
多くの話に、その話題にまつわる文人や偉人の話、
あるいは小説の中に出てくる話が挿入されていることで、
ますます興味がふくらみます。
たとえば、「植物園」は、
『泉鏡花の書いた「御殿坂下お笑草」といふものの中に
「足駄禁制」といふ一項がある』という一文で始まる。
ほーっ、明治時代の植物園で、
足駄で入園するのを禁じているところがあったという話なのだなと、
いきなり私の好奇心が高まる、というわけです。
足駄とは高下駄のこと。
現在のように道路が舗装されていなかった時代、
雨が降って、道がぬかるんでいる時や、
さらには屋外にあったトイレを利用する際、
当時の人々は、足を汚さないように高下駄を利用した。
植物園とは小石川植物園のことで、
実際、当時の小石川植物園では、足駄での入園を禁止していて、
貸し出し用の草履があり、それが三厘だったという話。
https://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/koishikawa/
現代のことに置き換えるとしたら、
植物園でのハイヒール禁止、といったところでしょうか。
話の内容の面白さもさることながら、語り口がなめらかで、
見たこともない行ったこともない明治時代の光景が、
目の前に、ありありと浮かんでくるのです。
もう一冊、『明治の迷宮都市』についても書きます。
サブタイトルに「東京・大阪の遊楽空間」と。
欧米に追いつけと、急激な変革を遂げていった明治時代、
その明治の人々が求めた快楽。
見世物小屋、百貨店、パノラマ館、高塔、博覧会。
著者の橋爪紳也氏は、
「都市とは、その存在自体が見世物である」と語っています。
タイトルやカバー絵からのイメージは、
明治の人々の快楽、愉楽が、
都市という空間を通じて書かれているのかなと思えてしまいますが、
当時の地図や版画を用いて、
都市空間がどのように出来上がっていったのか、
学術的に、かつわかりやすく書かれた本書。
映画館が明治時代からあったというのは想像がつきますが、
屋上遊園、ジェットコースター、住宅展示場、市中温泉、
これらも、すでに明治の時代にあったという話。
それぞれにまつわる歴史や逸話も語られていて、
明治時代好きを満足させてくれる一冊です。
元号が明治になる1年前の慶応3年。
(慶応4年9月8日に明治に改元)
その慶応3年にも、とあることで興味津々なのですが、
それに関しては、またいつか書きましょう。